
転職先に出す源泉徴収票はいつもらえる?もらい方や提出の必要性について解説
転職後、源泉徴収票がいつもらえるのか、提出が遅れた場合はどうなるのか、不安に感じる方は少なくありません。
実際、受け取りや提出のタイミングはわかりにくいこともあります。
本記事では、転職時の源泉徴収票に関するよくある疑問や、その対処法についてわかりやすく解説します。
転職後の手続きをスムーズに進めるためにも、ぜひ参考にしてください。
源泉徴収票についての基本情報
まず、転職時に必要となる源泉徴収票について、基本的な仕組みや種類を整理しておきましょう。
源泉徴収とは何か?
源泉徴収とは、会社が給与や賞与を支払う際に、あらかじめ一定額の税金を差し引き、従業員に代わって国に納める仕組みです。
差し引かれる税額は年間の見込みに基づいているので、実際の金額との間に差が生じることがあります。
そのため、年末には「年末調整」によって過不足を清算します。
従業員はこの仕組みによって、個別に納税手続きを行う必要がなくなるのです。
源泉徴収票の種類
源泉徴収票には、支給内容に応じていくつかの種類があります。
主なものを見ていきましょう。
①給与所得の源泉徴収票
給与所得の源泉徴収票は、1年間に支払われた給与の総額、差し引かれた所得税額、適用された控除額などが記載された書類です。
年末調整後、通常は12月の給与明細とともに配付されます。
途中退職の場合も、在職中の支払い内容をもとに発行され、年末調整や確定申告の際に必要となります。
②退職所得の源泉徴収票
退職所得の源泉徴収票は、退職金の支給に伴い発行される書類で、受け取った退職手当と差し引かれた所得税の金額が記載されています。
通常は退職後1か月以内に会社から交付され、年末調整の対象とはなりません。
再就職した場合でも、この書類を新しい勤務先へ提出する必要はなく、給与所得とは区別して扱われます。
転職先で源泉徴収票が必要な理由
転職先で前職の源泉徴収票の提出が求められるのは、年末調整に必要な情報をそろえるためです。
所得税は、毎月の給与から1年分の見込みで差し引かれており、年末には実際の金額との差を調整する必要があります。
そのため、年の途中で転職した場合は、前職の支払い情報も反映させる必要があるのです。
退職したら源泉徴収票はいつもらえる?

源泉徴収票は、退職時の最後の給与支払いの前後に交付されるのが一般的です。
所得税法では、事業主が退職者に対して退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付するよう義務づけられており、多くの場合は自宅へ送付されます。
会社員であれば、特に申請をしなくても、退職後に自動的に送付されるケースがほとんどです。
前の職場に源泉徴収票をもらっていない時の対処法
源泉徴収票が手元にない場合でも、状況に応じた対応をすることで、年末調整や確定申告に備えることができます。
源泉徴収票をもらっていない場合どうしたらいい?
退職後1か月を過ぎても源泉徴収票が届かない場合は、前職の担当者に連絡して発行を依頼しましょう。
依頼しても発行されない場合には、居住地の税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。
その際、手元に給与明細があれば写しを添えることで、対応がスムーズになることがあります。
もらったが無くしてしまった場合は?
源泉徴収票を無くしてしまった場合は、前職の会社へ再発行を依頼しましょう。
再発行は認められており、通常は経理や人事の担当部署が対応します。
発行までには1〜3週間ほどかかるのが一般的で、時期によっては1か月ほど要することもあります。
なお、税務署や役所では再発行を行っていないため、必ず勤務していた会社に直接問い合わせる必要があります。
源泉徴収票をもらえないケースもある
会社の事情や働き方によっては、源泉徴収票が発行されない場合もあります。
退職した会社が倒産した
退職した会社が倒産した場合は、破産管財人に源泉徴収票の発行を依頼しますが、発行されないことがほとんどです。
転職先が決まっている場合は、前職の給与明細を転職先に提出し、年末調整用の書類を作成してもらいます。
転職先が決まっていない場合は、税務署で源泉徴収票不交付の手続きを行いましょう。
業務委託や請負で働いていた
業務委託や請負契約で仕事をした場合、源泉徴収票は発行されません。
これは、個人事業主やフリーランスの人が企業と雇用関係を結ばずに働いたケースに該当します。
報酬は給与所得ではなく、雑所得または事業所得にあたるため、源泉徴収の対象にはなりません。
このような場合は、自分で確定申告を行う必要があります。
源泉徴収票が年末調整までに間に合わない場合は?
前職の源泉徴収票の発行が年末調整に間に合わなかった場合は、自分で確定申告を行う必要があります。
なお、確定申告を行う際にも源泉徴収票は必要になります。
最近では無料で使える確定申告アプリも増えており、手軽に手続きを進められますが、不安がある場合は税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。
転職先に源泉徴収票を提出しなかったらどうなる?

転職先に前職の源泉徴収票を提出しない場合でも、自身で確定申告を行えば特に問題はありません。
しかし、提出も確定申告も行わないまま放置すると、税金が正しく処理されず、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。
源泉徴収票を出さない場合は、必ず確定申告を行いましょう。
転職先に源泉徴収票をどうしても提出したくない場合
源泉徴収票を提出したくない事情がある場合も、正しく対処すれば問題ありません。
ここでは、具体的な理由や対策について紹介します。
提出したくない主な理由とは?
転職先に源泉徴収票を提出したくない理由としては、前職の勤務状況や在籍期間を知られたくない、副業の事実を伏せておきたい、あるいは休職歴を伝えたくないなど、個人的な事情が関係しているケースがあります。
そうした背景から、提出に抵抗を感じる方もいるようです。
自分で確定申告を行う
源泉徴収票を提出しない場合でも、自分で確定申告を行えば問題ありません。
なお、確定申告とは、年末調整と同様に正確な所得税額を計算して納付するための手続きです。
転職先には、事前に自分で申告する旨を伝えておくと、スムーズに対応できるでしょう。
ただし、国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者5,076万人のうち、年末調整を受けた人は4,635万人で、全体の約91%にのぼります。
会社で年末調整を受けるのが一般的であるため、自分で確定申告を行う場合は、会社側に疑念を抱かれないよう配慮することが大切です。
提出を断る際の配慮すべき伝え方とは?
源泉徴収票の提出を断る際は、相手に疑念を抱かせないよう、伝え方に十分な配慮が必要です。
ここでは、口頭で伝える場合とメールで伝える場合の具体的な例文を紹介します。
口頭で伝える場合
源泉徴収票を提出しないことで、前職について何か隠しているのではと誤解されるのは避けたいものです。
そのため、「確定申告で適切に対応する意思」と「会社に迷惑をかけない姿勢」をしっかり伝えることが大切です。
転職に際して個人的な事情があり、今回の年末調整は確定申告で個別に対応する予定です。
御社の手続きに支障が出ないよう対応いたしますので、どうぞご安心ください。
このように、「事情がある」と曖昧にしつつ、「会社に不利益はない」と明言することで、不要な誤解を避けやすくなります。
メールで伝える場合
メールで伝える際は、丁寧な言葉遣いに加えて、「個人的な事情があること」と「御社の業務に支障はないこと」を明確にすることで、不必要な誤解や懸念を招かずに伝えることができるでしょう。
件名:源泉徴収票のご提出について
お世話になっております。
このたびは源泉徴収票の件につきましてご連絡いただき、ありがとうございます。
誠に恐縮ではございますが、転職に伴う事情により、今回は確定申告にて対応させていただきたく存じます。
年末調整につきましては、私自身で適切に手続きを行い、御社にご負担やご迷惑をおかけすることのないよう責任をもって対応いたします。
何卒ご了承賜れますと幸いです。
このように、「会社の制度に従わない」のではなく、「自分の責任で手続きを進める」という姿勢を伝えることが重要です。
転職時の源泉徴収票に関するよくある質問

ここでは、転職時によくある源泉徴収票に関する疑問を、Q&A形式でわかりやすく解説します。
Q1:源泉徴収票は転職先にいつ提出するのが適切?
源泉徴収票を受け取ったら、なるべく早めに転職先へ提出するようにしましょう。
遅くとも、年末調整の準備が始まる10月から11月頃までに提出するのが理想です。
提出が間に合わなければ年末調整を受けられず、自分で確定申告を行う必要があります。
年末に近い時期に転職した場合は、前の勤務先に早めに源泉徴収票の発行を依頼しておくと安心です。
Q2:1年間で数回転職した場合はどう対応すればいい?
1年間に複数の職場で給与を受け取っている場合は、それぞれの会社から源泉徴収票を受け取り、年末に在籍している会社へまとめて提出します。
すべての源泉徴収票をもとに年末調整が行われるため、漏れのないよう事前にそろえておくことが重要です。
Q3:退職後に前の会社が吸収合併されたときは?
前の勤務先が吸収合併された場合、源泉徴収票に記載される会社名は、使用される印鑑によって異なります。
前の会社の印鑑が残っている場合は、その会社名で源泉徴収票が発行されます。
一方で、合併した新しい会社の印鑑に切り替わっている場合は、新しい会社名で発行されます。
退職時に在籍していた会社名と源泉徴収票に記載されている会社名が異なる場合は、転職先にその事情をあらかじめ説明しておくと安心です。
まとめ:転職時の源泉徴収票は早めの確認と柔軟な対応がポイント
転職後の手続きをスムーズに進めるためには、源泉徴収票の受け取りや提出に関する確認を早めしておくことが大切です。
提出が難しい場合は、確定申告で対応できる方法があり、丁寧に事情を伝えることで転職先とのトラブルも防ぎやすくなります。
状況に応じた適切な対応を心がけることで、安心して新しい職場でのスタートを切ることができるでしょう。